良い革? 悪い革?

つい先日、スリーレッグスのスクラッチレザーverが届きました。実は結構チャレンジな事ですので、一定の理解がえらるようにと思い少し突っ込んだ事を書いてみます。
前もって書いておきますが、ご理解頂けない部分がある事も承知の上ですし、ご批判的な意見もあるかもですが、革関係の業種の方が少しでも発展する為にも理解を促す必要はあると思って書かせて頂きます。

革の善し悪しって何?

そもそも、革の善し悪しって何でしょう?
なめしの問題でしょうか? もしくは生き物の種類の差でしょうか? そもそも原皮の問題でしょうか? はたまたブランド由来のイメージの問題でしょうか? もしくはタンナーもブランド化されつつある昨今ではタンナーのネームでしょうか?恐らく消費者側と、生産サイドでは認識が異なるのは間違い無い気がします。

一昔前は厚い革=良い革

僕は今の仕事について約15年になります。よくよく考えれば、その間にユーザー側でも随分認識が変わってきたような気がします。
入りたての頃は、まだ厚い革志向真っ盛りでした。薄い革=良くない 厚いこそ良い革 というのが多く声だった気がしています。もちろん一部の方はそれが正しく無い事は知っていましたが、人気のあるブランドがそーゆー傾向にあると、市場全体に蔓延してしまう傾向にあると感じてしまいます。
この辺はブランド由来のイメージの問題なのかも知れません。

薄い革は良くない革?

コレは真っ赤な嘘です。どうしてそんな事言われたのか謎です。恐らくヘビーレザーが全盛期に、薄い革は弱いというレッテルを貼られたのでしょう。全く同じ素材、なめしなら確かに薄い革のほうが弱くなりますが、柔軟性は出ますね。それに軽い。また、異なる生き物の革での比較であれば特性が変わりますから、同じ厚みでも強度は変わります。もちろんナメシでも変わります。
逆に厚い革=良い は正しい事もあります。
例えばベルトのようなハードな物をハードに作るとき4~5mm厚が欲しい。でも最近は厚いのが出ない。そこを妥協して3.5mmとかで作るなら、確かに厚い革のほうが良かったのに って話になります。
でもコレは薄い革が悪いって話では無いです。そもそも狙っているイメージの問題ですし、使う革によって厚みが出ない場合もありますから厚くないとダメ なんて事は無いです。ジーンズなら極厚のベルトもかっこいいですが、スーツじゃ微妙です。

では生き物由来か?

コレは一番関係無いですね。牛も馬も鹿も羊も山羊も豚もそれぞれメリット、デメリットがあります。コレはそのうち革のウンチクで書きますので割愛します。

原皮&なめしの工程はどうか?

コレは結構関係あり。原皮の状態は革に反映されますので、原皮が悪ければ作られる革も良ろしくない。なめしもとても大切な工程ですので、どうなめされるかで良い悪いの判断は変わりますが、ただ価値観の部分もかなり含まれます。各なめしの事もそのうちウンチクで触れますので今回は別の視点で...。

価値観の難しさ

断言する気もありませんが、簡潔に書いてしまえば革の善し悪しなんて価値観次第です。
僕は以前、アメリカのサドルが好きで個人輸入して使っていました。とてもナチュラルな表情で、土地的にピットなめしが行いやすいのか、芯までシッカリとなめされており未だに好きな革です。
ただ、万人には受け入れられなかった。表面に傷が多すぎなのです。カービングで使うなら表面に細工を施してしまうから傷など気にしないのでしょうが、カービングを入れないと傷を避けきれません。厳密に言えば避けられますが、要は単価に合わなくなる。
高くても良ければ簡単です。革1枚で財布1個の計算で良ければ全て最良の部分のみで作ります。ただし、その時はあくまでも革一枚で1個の計算で販売するという事です。
ちなみに僕の個人活動では現在は日本のタンナーの革を使っていますので、その辺デリケートです。傷など少なく、見栄えも良い。でも、それでも皆無では無いです。使えない部分が多い時も多々あります。

傷は悪いのか?

良いとは言いません。ただ、悪いとも言いません。
当時僕がアメリカから革を買っていた時に傷には当然悩みました。行って選べるわけではないし・・・。
そこでメールを1文「僕は傷の少ない綺麗な革が欲しい」って入れてみる事にしました。
そしたら「革なんだから傷くらいある」的な内容の文を返され、いつも通りの革が届きました。

生き物から得た素材です。この感覚が当たり前で、僕もたまにお客様に言う事を、僕自身が言われてしまった恥ずかしい話です。特に馬や鹿のように運動量が豊富な生き物ほど傷は多く付いているのが当然です。

傷以外の要素

傷以外に概観上あまり良くないと評価されるのがトラ。トラとは皺みたいなもんです。腹の部分とか、首の部分にあって繊維が緩い。コレは僕も良くないと素直に言いますが、ある程度消す事も出来ます。僕の店程度の機材でも少しなら消せます。

トラ before
トラ before

コレ↑が加工前。
かなり緩かったので、ゴミにしたり、勿体無いのでノベルティー程度のタグを作るのに使います。それを少し加工すると

トラ after
トラ after

かなり消えましたね。横に抜いた後があるので、同じ革なのは分かるかと思います。

このように僕が持っている道具程度でも消せます。似た内容で傷もある程度消せます。もしくは顔料を吹く という手段もあります。他にも洗いをかけてしまって誤魔化す事も出来ます。もしくは表面に型押ししても随分消せます。
一見すると綺麗に作れますから均一な革志向の方には良いのかも知れません。ただし、加工は加工です。ナチュラルでは無い。それに、その内表面化する場合もあるから、加工してまで僕は使わない。

あと皺という部分では、ベルトではショルダー革は人気ありますね。要は肩の部分ですが、独特のウネがあって、ベンズ程締まって無いけどヤレ感が良い とかね。僕もショルダー革は好きです。ただし緩すぎるのは嫌です。中には衣類でもトラが多いほうが柔らかくて革らしくて好きって人も稀にいますね。仲の良い方でもお一人いらっしゃいます。

ついでにですが、シュリンクさせたり空打ちしてシボ(皺)を強調させた革もありますが、コレはトラとは違いますので・・・。

ただ綺麗なだけなら加工、もしくは合皮

コレはハッキリ書いてしまいますが、ただ綺麗なだけなら合皮を買ったほうが良いです。革の様な表情に作られた物 なのでそもそも革じゃ無いですが、革じゃ無いから傷は無いんです。製造工程での傷はあるかもですが・・・

結局皮が革

そもそも、皮が革なんです。傷もあれば、皺もあるし、毛穴もある。人の皮も一緒でしょう。ただひたすら美しく作るなら美しい部分のみで作るしかない。つまり高額にするしか無いです。ここ近年で僕が好んで使っていた革は30%以上単価が上がりました。他の革に関してもどんどん上がっています。高額でも美しければ良いと言ってもらえれば、単純に高額にして今以上にひたすら綺麗に作りましょう。コレはどのメーカーも同じだと思います。すでにバカ高いトコロもありますが・・・傷も避けずに・・・。
ただ、そんなに皆さん裕福なんでしょうか?

それに、コチラはあの革が良かった と思っていても傷等が原因で使うのやめる革もあります。前述の米サドルもしかりです。
あと、全体で見れば鹿革とか。あれは傷が凄く多いですし、そもそも希少で高いので革の高額化が進むと手を引くメーカーも多い気がします。良い革なのに・・・。馬も当然傷多いですよ。動きますから。

結局、傷やトラだけでも革の良い悪いは判断してないって事です。皮ですから、それぞれ個体差があって当たり前。傷が多いヤツもいれば、少ないヤツもいる。皺だらけのヤツもいれば、艶々なヤツもいる。それは確かに良い悪いですが、傷は多いけど締まってる とか 皺は多いけど傷は少ないとか なめし自体は最高とか 色々なのですよ。
超深い傷を入れちゃったり、ゆるゆるでどうにもならない部分が入っていたり、有り得ないけど虫食い部分が入っていたらそれはもう駄目だけど、原皮の傷や、多少のトラへの理解が進めば、もっと色んなメーカーが楽になると思いますし、そしてもっと良い革が増えるだろうし、買いやすい価格にもなると思う。

革ってそもそも固有の表情が楽しめるのも一つの良さでしょう? それなのに全体としては、どんどん均一化の道へ歩んでいる気がします・・・。

今回のライダースは、一定の理解を得ている方だけにお送りするアイテムです。傷に関してはおもいっきり含ませてます。でもなめしは通常と同様です。ハリも良いです。どう理解されるか未知数ですが、ご興味があればどうぞ見に来て見て下さい。ある意味、通常版がどれ程傷を避けているかも分かります。

ちなみに、他アイテムに関しても革には少しの傷はつき物です。当然、今回のような「あえて」以外は最低限避ける努力はしていますが入ってしまう事があります。せめてその点のみご理解いただきたく思います。

ただでさえ高い素材に加え、一針ミスをした時点でパーになるのが皮革製品です。材料費が高騰する中で理解が進まないと、ひたすら高額化が加速するか、革をやる人や扱うお店が無くなるかも知れませんね。もしくはナチュラルな仕上げの革が市場から少なくなるかもですね。

ではでは 非常に長文で失礼致しました。

対象のスクラッチレザーVerはコチラです>>スリーレッグス スタンダードライダース-スクラッチレザー

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